8がつのこらむ (2023年08月01日)
〈チャプレンのコラム〉
アリとキリギリス
めざましテレビで放送されているショートアニメ「紙兎ロペ」を、私はよくYouTubeで観ています。何年か前に、その中の登場人物であるロペとアキラ先輩がイソップ童話の「アリとキリギリス」をテーマに話をしていたのを思い出しました。
ご存じの通り、アリたちは食料を運んでしっかり働き続けますが、他方キリギリスはヴァイオリンを弾いて遊んでいます。おそらく誰でもこの童話を呼んで、「私もアリさんのようにこつこつと働かなければならない」と感じることでしょう。私もそう思っておりました。しかし、ショートアニメ「紙兎ロペ」の中で、アキラ先輩は、この童話に対して、おもしろい見解を示します。「キリギリスは遊んでいたのではない。ヴァイオリンを演奏することによって、働き続けるアリたちを、一生懸命励まそうとしたのではないか。」なるほど。確かに音楽には、人を元気づける力がある。「アリさんのようにこつこつと働きなさい。」それはそれで大切なメッセージですが、アキラ先輩の見解からすれば、アリにはアリの才能、能力があり、キリギリスにはキリギリスの才能、能力がある。それは、ある意味「自分らしさ」と言っても良いかもしれません。
聖書では、それぞれ異なる才能、能力、言い換えれば「自分らしさ」を神さまからいただいた「賜物(プレゼント)」として捉え、それを誰かのために役立たせることを勧めています。例えば、キリストの使徒となったパウロは、彼の書いた書簡の中で、体は、目や耳、手や足といった多くの部分から成って一つであるように、それぞれ神さまからいただいた賜物は、人それぞれ異なるのだと述べています。「自分らしさ」、神さまからいただいた「賜物」が人それぞれ異なるからこそ、それが全体の益となる。
時に、私たちは、他者と比較して「自分はなんてダメな人間なんだ」と自己卑下に陥ってしまうことがあります。けれども、自分の嫌いだと思える「自分らしさ」が、実は他者にはない才能、能力、神さまからの「賜物」であるのかもしれません。