園長先生のコラム

3月のこらむ (2024年03月01日)

❀目を閉じ、手を合わせる❀

長い時間、正座をしていると足がしびれてしまうという経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。私も、祖父の法事の際にお仏壇の前でずっと正座をしていましたら、いざ立とうとしても、足がしびれて立つことができなかったという恥ずかしい思い出があります。

齊藤孝さんは、『呼吸入門』という本の中で、「正座」について、次のようなことを書いておられました。「正座」という座り方は、人間が自然にできる姿勢ではなく、非自然的な姿勢です。けれども、特に年配の方々の世代では、肘が悪い人は別にして、「正座のほうが楽だ」と言う方々も多い。正座をすることによって、むしろからだも心も休まるのだと言います。これは、「正座」という座り方の「型」が、からだに染みついていて、からだを休める時の「技」になっているからなのだと齊藤さんは指摘しています。

このように「身体作法や身体運用を、からだに『型』として定着させる」ことは、キリスト教の礼拝においても存在します。キリスト教用語では、それを「所作(しょさ)」と呼んでいます。礼拝において「座る」、「立つ」、「ひざまずく」ことは、基本的な「所作」にあたります。自分の額や胸の前で「十字を切る」というのも「所作」の一つです。さらに、神さまに向かってお祈りするときに、というのも大切な「所作」であると言えます。

聖三一幼稚園では、毎週火曜日に子どもたちと一緒に礼拝をおささげしています。礼拝の中でお祈りが始まりますと、子どもたちは皆、静かに目を閉じ、手を合わせます、そのような子どもたち一人ひとりのお祈りの姿にいつも感動させられております。というもの、子どもたち一人ひとり、このお祈りの「所作」が自然とできているのです。

私たちは、神さまに向かって「目を閉じ、手を合わせる」というお祈りの「所作(身体的作法)」を通して、私たち自身の心の在りようを(ととの)えていきます。幼稚園での日々の礼拝の中で、これからも大切にしていきたいことです。